横浜市立北山田小学校・横浜市教育委員会事務局 (神奈川県)

課題
  • 授業でICTを有効活用したい
  • 校務でICTを有効活用したい
  • 教職員の負担を軽減したい
  • 予算の確保に課題がある
導入製品・サービス
    • ICT支援員
自治体規模
100校以上
プロフィール

横浜市立北山田小学校
〒224-0021 横浜市都筑区北山田5丁目14番1号
https://www.edu.city.yokohama.lg.jp/school/es/kitayamata/

横浜市教育委員会
〒231-0031 横浜市中区港町1丁目1番地
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/org/kyoiku/

印刷用資料
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取材日
2019年11月取材

横浜市では、2018年度にICT支援員事業を実践推進校2校で試行実施し、2019年度からは市内の小学校340校に対象を広げ、ICT支援員を月2回程度の頻度で派遣しています。その経緯と成果について、実践推進校の横浜市立北山田小学校から板倉校長先生と中久喜先生、横浜市教育委員会事務局学校教育企画部小中学校企画課から情報教育担当の吉田主任指導主事、髙橋氏、佐賀氏の5名にお話を伺いました。

ICTに詳しい特定の教員に負担が集中していた

横浜市立北山田小学校 校長 板倉 千鶴 先生
▲ 横浜市立北山田小学校 校長 板倉 千鶴 先生

北山田小学校では、ICT支援員が派遣される前から、教育用パソコンやデジタル教科書を全クラスで活用し、実物投影機やiPadなどのICT機器も積極的に取り入れていたそうです。だからこそ、機器トラブルも多かったと板倉校長先生は言います。「当時、機器の管理やトラブル対応はICTに詳しい教員に頼りきりで、大きな負担がかかっていたと思います」(板倉校長先生)。「パソコン内部の技術的なことは詳しくないので、インターネットで調べたり、教育委員会に電話したりして都度対応していました。それでも機器が復旧せず、活用できないことも度々ありました」(中久喜先生)。



ICT支援員は学校で一緒に働く仲間のひとり

横浜市立北山田小学校 中久喜 裕太 先生
▲ 横浜市立北山田小学校 中久喜 裕太 先生

中久喜先生は、ICT支援員が派遣されてから機器の管理が楽になったこと、教材研究の時間が増えたこと、授業の幅が広がったことの三つを感じたそうです。「機器の準備や片付け、児童が撮影した写真データの移動、デジタル教科書の更新など、事務的・物理的に時間のかかる作業を代わりに対応してもらえるので、教員は授業や子供たちのことに専念できます。授業で使用するアプリケーションの活用方法をアドバイスしてもらえるのも大変助かりますね。授業中は、ICT支援員に機器のトラブル対応や児童の質問に応えてもらうなど、教員と二人体制で授業を進めることができるので効率的です。子供たちも、ICT支援員に自分から積極的に声を掛けるようになりました」(中久喜先生)。



ICT支援員は学校で一緒に働く仲間のひとり

これを受けて板倉校長先生は「マンパワーが増え、授業中の児童の待ち時間が圧倒的に少なくなりました。夢中になって授業に取り組む児童が増えましたね。自分から質問をすることが苦手な子供たちも、ICT支援員から声を掛けてもらえるので安心して授業に取り組んでいます」と、子供たちの変化を教えてくださいました。 限られた時間の中で、さまざまな業務に対応しなくてはならない学校では、ICT支援員は大きな存在になっています。



子供たちがICTを活用できる環境を平等に

横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部 小中学校 企画課 情報教育担当 主任指導主事 吉田 圭一 氏
▲ 横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部
  小中学校企画課 情報教育担当 主任指導主事 吉田 圭一 氏

子供たちの情報活用能力を育成するためには、授業で子供たちがICTを活用できる環境が必要だと吉田主任指導主事は言います。「先生のスキルによって、児童がICTを活用した授業を受けられないということがあってはいけません。ICT支援員には、機器の活用に不安を持つ先生の支援や、先生方が一人でICTを活用していくために必要な自立支援をしてもらい、子供たちにとってICTを十分に活用できる授業が行われるようにしたいと考えていました」。



予算確保のために、現場の声を効果指標として活用

横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部 小中学校企画課 情報教育担当 髙橋 友理恵 氏
▲ 横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部
 小中学校企画課 情報教育担当 髙橋 友理恵 氏


髙橋氏は、ICT支援員の派遣を340校へ拡大するにあたり、試行実施していた実践推進校2校にアンケートを取り、ICT支援員の効果指標として活用しました。「当初は、どのように支援をしてもらえば良いか分からないという先生方の声もありましたが、今では常駐してほしいとまで肯定的な意見を頂きます。少ない学校数で試行実施をして、現場でのICT支援員の効果や必要性を明らかにしていくことは、事業を段階的に拡大していく上で有効だと思います」。


子供たちのためにも、まずは教員のサポートを

横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部 小中学校企画課 情報教育担当 佐賀 咲野 氏
▲ 横浜市教育委員会事務局 学校教育企画部
  小中学校企画課 情報教育担当 佐賀 咲野 氏


佐賀氏は、教育委員会にとってもICT支援員が必要だと話してくださいました。「小学校全校の教育用パソコンを入れ替えた際、ICT支援員が働きかけてくれたおかげで、学校に新しい機器の情報が漏れなく浸透していきました。さらに、各校のICT支援員から委員会に問い合わせがあったことで、初めて分かった機器の不具合などもありました。私たち教育委員会からの情報が全校に伝わった点に加えて、現場の状況を把握できたという点でも大変助かりました」。


ICT支援員は学校と教育委員会をつなぐ架け橋


最後に、ICT支援員の配置や活用を検討している自治体や学校に向けて、板倉校長先生と吉田主任指導主事からアドバイスを頂きました。

「学校にICT支援員がいることで、子供たちを教える以外の仕事から教員を解放させることができます。これは、働き方改革の推進にもつながると思います。そのためにも、ICT支援員を派遣することはもちろん、派遣する頻度をできるだけ増やした方がいいですね」(板倉校長先生)。

「ICT支援員の派遣を拡大するにあたって、将来どのような教育が行われるべきか、子供たちにどのような力を身に付けさせたいかなど、実現したい教育の未来を構想しました。その上で、ICTを活用する先生方の支援の必要性を説明していったことが、予算確保につながったと思います。事業を継続して進めていくには、教育のグランドデザインを明確にすることが大切だと思いますね」(吉田主任指導主事)。

北山田小学校は、今後も新しいICT機器を取り入れながら、積極的に活用を進めていきたいとのことです。
横浜市教育委員会は、引き続き先生方にスキルアップしてもらうためのサポートとICT環境の整備を推進し、
授業で安定して活用できるようにサポートをしていく方針です。