
品川区教育委員会 (東京都)
- 課題
-
- 授業でICTを有効活用したい
- 導入製品・サービス
-
- その他
- 自治体規模
- 30校~49校
- プロフィール
-
品川区教育委員会 東京都品川区広町2-1-36 第二庁舎7階
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kukyoi/index.html
- 印刷用資料
- ダウンロード(PDF:2MB)
- 取材日
- 2025年3月
東京都は、不登校等の児童・生徒に対し、3Dメタバースを活用した「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」(VLP)を運用しています。品川区は2024年度から参加し、VLP事業プロモーターのJMCと連携しながら子供たちをサポート。
学習機会の確保と、もう一つの居場所づくりを目指した区独自の取り組みについて、同区教育委員会事務局の丸谷大輔センター長と野田健太担当主査にお話を伺いました。
子供たちの社会参加の機会を広げるため、東京都のVLPへ参加

品川区は、区独自の不登校児童・生徒向け教育施設「マイスクール」を区内4カ所で展開し、支援員や心理職員による支援を行っています。一方、マイスクールによるサポートが届かない子供への支援を課題とした同区は、オンラインを活用したアプローチ方法として、VLPに参加したといいます。
検討当時の思いについて、丸谷氏はこう語ります。
「不登校児童・生徒は全員がマイスクールに通学できるとは限りません。そこで、オンラインを通じた交流であれば、子供たちが参加しやすいだろうと考えました。教員や指導員の目が届きにくい子供たちにも社会と関わるきっかけを持ってもらうため、VLPへの参加を決定しました」。
さらに、不登校児童・生徒の学習機会確保のため、VLP内で指導を受けられる「しながわオンラインスクール」を開校。「誰一人取り残さない」という理念のもと、主要5教科対応のWeb学習教材「デキタス」を活用した週3日のオンラインを活用した学習支援を行っています。
▲品川区教育委員会 丸谷大輔教育総合支援センター長
継続した周知活動で区内の認知拡大。1年間で利用者が3倍へ

2024年末のしながわオンラインスクールの登録者数は、区内の不登校児童・生徒の約1割に相当する76名。開校した2024年5月時点の20名程度から1年足らずで3倍以上に増加した背景にあったのは、地道な周知活動です。
「月間のプログラムをお知らせする『VLP通信』を配布しています。登録人数の増加を機に、郵送から連絡帳アプリへ切り替えるなど、必要な方へ必要な情報が届くよう試行錯誤しています」(野田氏)。
こうした周知活動の継続が、しながわオンラインスクールの認知度上昇と登録人数増加に寄与しました。
▲品川区教育委員会 野田健太教育総合支援センター不登校・相談担当主査
豊富な体験が自信に。子供たちの次なるステップを後押し
しながわオンラインスクールでは、オンライン授業以外にもさまざまなイベントを実施し、社会との接点や子供同士による交流の機会を創出しています。「おしゃべり会」は、VLP上で講師が提示するテーマに沿った談話を楽しむ会です。回を追うごとに積極的に発言する子供が増え、テーマを超えた活発な会話が生まれるようになったといいます。
もう一つの代表的な取り組みである「国際交流プログラム」では、アジア圏を中心とした海外の同世代とオンラインで交流。これらのイベントへの参加は、子供たちが変わるきっかけになったといいます。
「各国の食事や文化について意見交換する中で、回を重ねるごとに積極的なコミュニケーションが見られるようになりました。テキストチャットからボイスチャットに切り替える子供の姿などからも、意識の変化を感じ取れています」(野田氏)。
「VLPでの交流をきっかけにしてマイスクールへ通うようになった子供や、校内の別室登校から通常学級に復帰した子供もいます。VLPへの参加が次への一歩を踏み出すきっかけになっている手応えは感じられますね」(丸谷氏)。


VLPを通じて社会的な自立を促す
「この1年で多くの成果がありました。一方、VLPのアカウントを持っていてもログインしない児童・生徒が参加したくなるように魅力を伝えるのが今後の課題です。将来的な目標をVLP内での体験と実世界の生活を結びつけるのが我々の役目。子供たちに合った社会的自立を促せるような取り組みを続けたいと思います」(丸谷氏)。
最後に、不登校児童・生徒への支援を目指す自治体や学校に向けメッセージをいただきました。
「VLPはただのオンライン上の仮想空間ではなく、子供たちの居場所になり得る場所です。それぞれの自治体ならではの支援と融合させながら、子供たちが社会の形成者として自立できるように支えていければと思います」(丸谷氏)。
「23区内でVLPに関するアイデアを随時交換しています。ひとりで出せるアイデアには限界がありますので、ぜひ自治体同士で意見を交換しながら、よりよい支援の道を探していきましょう」(野田氏)。

▲オンライン授業のイメージ