北区教育委員会 (東京都)

課題
  • 授業でICTを有効活用したい
導入製品・サービス
    • ICT支援員
    • その他
自治体規模
30校~49校
プロフィール

北区教育委員会 東京都北区滝野川2-52-10
https://www.city.kita.lg.jp/children-edu/education/1008281/index.html

印刷用資料
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取材日
2025年3月取材

東京都は、新たな学びの場として「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム(VLP)」を各自治体に提供しています。
 中でも北区教育委員会は、不登校児童・生徒の支援にVLPを積極的に活用しており、その取り組みが注目を集めています。
 VLP導入の背景や具体的な活用方法について、北区教育委員会の酒井史子氏、後藤眞里氏、中村向汰氏にお話を伺いました。

VLP専属のICT支援員を北区独自で配置。孤立させない学びの実現を目指す

不登校児童・生徒が増加する中、「教育先進都市」を掲げる北区では、SNSを活用した不登校対策や、児童館への校外別室支援員の配置など、さまざまな取り組みを進めていました。そうした中で、JMCが事業プロモーターを務める東京都のVLP事業が2023年9月にスタート。その有用性を感じて、北区も2024年から同事業に参加しました。
 「新宿区や渋谷区の先行事例を拝見し、『これなら家から出ることが難しい子供ともつながることができる!』と感激しました」と語る酒井氏。北区のVLPは「星のように一人一人が輝ける場所にしたい」という願いを込めて、バーチャル・ルーム「ステラ(星)」と名付けられました。
 スタート時は、特に子供たちに寂しい思いをさせない環境づくりが大事だと考え「大人が積極的に関わる」という方針を決めました。「センター職員や適応指導教室の指導員も操作方法の研修を受けており、連携してサポートに当たります」と酒井氏。
 さらに、こまやかなサポートを実現するため、都が配置しているオンライン支援員に加えて北区独自でICT支援員を配置しました。酒井氏は、「操作方法に詳しく、事業の本質を理解している方に入ってほしいとJMCに相談しました」と振り返ります。
 派遣されたICT支援員は、アバター名「シュテルン」として、週2回、センター内の専用パソコンから「ステラ」内でサポートを行います。「すぐそばにいてくれるので、何でも相談できて、とても助かっています」(酒井氏)。ICT支援員がいない日は職員が交代で「ステラ」をオープンするなど、大人たちが一丸となって子供を見守っています。

北区教育委員会 酒井 史子氏
北区教育委員会 酒井 史子氏
北区教育委員会 後藤 眞里氏(左) 中村 向汰氏(右)
北区教育委員会 後藤 眞里氏(左) 中村 向汰氏(右)

空間内でクイズ大会や鬼ごっこ。さまざまな学びや体験の入り口に

ICT 支援員専用アバター「シュテルン」

「シュテルン」ことICT支援員は、鬼ごっこやしりとりなどの遊びを通して、子供たちがいきいきと楽しめる場をサポートしています。特にイベント「ステラ☆タイム」のクイズ大会は大人気。空間内の掲示板「シュテルンのコーナー」には、子供たちが興味を引くコンテンツを紹介して、飽きない工夫を施しています。
 活動に慣れてきた子供たちが、新しく参加した子供たちに操作方法を教えたり、得意な知識を共有したりする場面も増え、自然なコミュニケーションが育まれているのだとか。「ステラが小さな社会となって、交流が生まれていることがうれしいです」と後藤氏は語ります。

▲ICT支援員専用アバター「シュテルン」

▲「シュテルン」のゲームコーナー

他事業との連携も積極的に進めており、理科実験の動画配信やオンライン学習教材へのアクセスも可能に。「ICT支援員が進め方を教えるので、安心して取り組めています。ステラに来る子供たちはパソコン操作に慣れているため、オンライン学習への親和性が高いようです」(後藤氏)。
 保護者からも「子供が毎日楽しいと言っている」「本当にやってくれてよかった」という喜びの声が上がっているといいます。

▲「シュテルン」のゲームコーナー

今後の目標は、ステラでの活動を学校に報告できる仕組みづくり

子供たちが社会へもう一歩踏み出すための、新たな目標もできました。「匿名で参加できるからこそ、のびのび過ごせる良さもありますが、学校の先生は自分のクラスの児童・生徒がステラでどのように過ごしているのか関心を持っています。活動内容によっては出席扱いにできる可能性もあるため、今後はステラ内での様子を学校へ報告できる仕組みを整えることが目標です。」と酒井氏は志を語ります。
 その一環として、2025年度には見守り専任の「ステラサポートスタッフ」を設置することになりました。ICT支援員はアドバイザーとして、引き続き運営をサポートします。「より良い環境づくりや人材確保に向けて、JMCには今後も協力をお願いします」(酒井氏)。

アバターを介した交流イメージ
▲アバターを介した交流イメージ
北区教育委員会の皆さま

最後に、不登校支援を推進したい自治体へのメッセージをいただきました。
 「スタートが肝心です。複数の大人で見守り、活用体制をしっかり話し合うことが大切です」(酒井氏)。
 「JMCのICT支援員のサポートのおかげで事業を軌道に乗せることができました。関わる人たちが共通理解を深めることで、より良い空間が生まれるはずです」(後藤氏)。